本年度の筆録は、新聞各社に掲載された「環境問題」の記事を、メインにおきたく存じます。少しでも環境問題を考える上での一助となれば幸いです。
(住職 近藤如生)
温室効果ガス「2050年に半減」と福田首相
福田首相は28日の衆院予算委員会で日本の長期的な温室効果ガス削減目標について、「我が国として2050年に半減する。20年もしくは30年の間に(排出量をマイナスに転じる)ピークアウトする」と述べ、日本が50年に排出量を半減させる方針を初めて明らかにした。
政府は、昨年5月に発表した地球温暖化対策の基本方針「美しい星50」で、「50年までに世界全体の排出量を半減」とする長期目標を提唱したが、日本としての具体的な目標には言及してこなかった。
首相は「他の国が半減できない時は、日本が頑張らなければいけないこともあるかもしれない」として、削減目標上乗せの可能性にも言及。鴨下環境相は「50%は最低ラインと考えている」と述べた。
温室効果ガス削減については、気候変動枠組み条約締約国会議(COP)などで、京都議定書(08〜12年)に続く13年以降の取り組みが議論されている。
首相としては、議長を務める7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を念頭に、温室効果ガス削減に積極的な姿勢を示し、国際交渉で主導権を発揮する狙いがあると見られる。
(2008年1月28日 読売新聞)
オフィスにCO2排出枠…温暖化対策法改正案
京都議定書の目標達成に向けて政府が今国会に提出を目指している地球温暖化対策推進法の改正案の内容が明らかになった。
二酸化炭素(CO2)排出量の多い全国のオフィスビルや百貨店を対象に初めて排出規制を設ける。
排出量が大幅に伸びている「業務部門」の対策を強化するのが狙いで、違反事業者には行政の勧告や事業者名の公表で臨むほか、罰金などの罰則についても検討している。
来年4月に施行したい考えだが、企業活動に影響を及ぼすとして、産業界の反発も予想される。
同法は現在、原油換算で年1500キロ・リットル以上の燃料を使用する大規模事業者などに対し、毎年の排出量を算定し、国に報告することを定めている。
今年度の対象事業所は1万5000程度と見込まれている。
改正案では、これらの大規模事業者のうち、排出量が急増しているオフィスビルや商業施設など「業務部門」に分類される事業所と、排水処理や廃棄物焼却施設などを、特に対策を強化しなければならない「特別特定排出者」に指定。床面積当たりの排出上限を定めるなど、業種ごとに排出できる量の指標を設ける。
正当な理由もなく指標を超えた事業所に対しては、国が排出抑制に必要な措置を勧告し、従わない場合は、その事実を公表する。
改正案ではまた、事業者が太陽光発電などの自然エネルギー促進のための費用を負担した場合、その負担分を自らの削減に組み入れる仕組みを設ける。中小企業の排出削減に協力した場合も、自らの排出削減量に算入できるようにする。
京都議定書で、日本は2008〜12年度の平均で、温室効果ガスの排出量を1990年度比で6%削減しなくてはならないが、06年度(速報値)は6・4%上回っている。中でも「業務部門」は、41・7%増と突出している。工場などの「産業部門」、発電所などの「エネルギー転換部門」、自動車、船舶などの「運輸部門」などは、現段階では、改正法の排出規制対象には含まれていない。
大規模事業所を対象にした排出規制は、東京都でも検討を進めている。原油換算で年1500キロ・リットル以上のエネルギーを使っている企業を対象にCO2排出量の削減を義務付けるもので、都によると、対象はオフィスビルや百貨店、病院が計約1000か所、工場や発電所が計約300か所になる見込みという。
(2008年2月5日 読売新聞)
バイオ燃料生産が温暖化促進!?森の減少で…米チーム試算
地球温暖化防止で注目されるバイオ燃料を生産するため、森や草原を、原料となる大豆などの畑に変えると、逆に温暖化を促進してしまうという試算を、米国の研究者らがまとめた。
森などが蓄えていた炭素が大量の二酸化炭素(CO2)として放出され、数十年から数百年後まではCO2抑制効果が出ないという。8日発行の米科学誌サイエンスに発表した。
試算したのは、米国の環境保護団体「ネイチャー・コンサーバンシー」とミネソタ大学の共同チーム。
森林や草原を畑にすると、燃やしたり、草木を微生物が分解したりする際に大量のCO2が出る。研究チームは、東南アジアやブラジル、米国などを例に、様々な植生をバイオ燃料用の作物畑に変えた場合に出るCO2の量と、生産されたバイオ燃料の使用によるCO2排出削減量が等しくなる時間を試算した。
試算の結果、最も時間がかかったのは、1ヘクタールあたり約3500トンのCO2を貯留している換算になるインドネシアやマレーシアの泥炭地の森をパームやしの畑に変える場合で423年。ブラジルの熱帯林を大豆畑にした場合は319年、米国中部の草原をトウモロコシ畑に変えた場合も93年だった。これらの期間に達するまでは、化石燃料を使う場合よりもCO2の排出量が総計で多くなり、地球温暖化を促進するという。
(2008年2月8日 読売新聞)
温暖化ガス、企業に排出上限検討 取引制度の研究本格化
政府は、国内の企業に温室効果ガスの排出上限を割り当て、過不足分を売買させる方式の排出量取引制度について、本格的な検討を始めることを決めた。これまで同制度の導入に後ろ向きだった経済産業省も、今月中にも省内に本格的な検討のための私的研究会を設置。京都議定書に続く13年以降のガス削減の国際枠組み(ポスト京都議定書)に向け、制度の是非や課題を整理する。
政府は近く地球温暖化問題に関する有識者会議を立ち上げる。町村官房長官は20日の記者会見で「(有識者会議で)排出権取引問題も取り上げられることも考えられる」と述べ、7月の北海道洞爺湖サミットを前に議論を加速する姿勢を示した。
一方、経産省は月内にも、産業技術環境局長のもとに排出量取引に関する私的研究会を発足させる。メンバーは学識経験者や産業界、非営利組織代表など10人程度。
この制度を先行導入した欧州連合(EU)や、導入に向けた動きが活発化する米国の実態を調べ、有識者から意見を聞く。温室効果ガスの排出量に応じて石油などに税金を課す環境税についても検討。6月までに論点を整理する。
日本は京都議定書で90年比6%のガス削減を約束しており、企業に排出上限を義務づけた排出量取引の是非はこれまでも議論されてきた。しかし、経産省と産業界は企業の国際的な競争力をそぐとして強く反発し、業界ごとに自主的な目標を設ける方式を採用。経産、環境両省の合同審議会でも、排出量取引は「検討課題」として結論を先送りしてきた。
ただ、ポスト京都議定書では、各国にさらに厳しい削減が求められるのは必至。経産省は同制度も「選択肢の一つ」として踏み込んだ検討が必要と判断した。
(2008年02月20日 朝日新聞)