筆録
 
2009年
 
4月18日(土)

三蔵法師紀行
ナーランダ 

玄奘は、当時仏教大学の様相を呈していたナーランダにて、シーラバードラ師の膝下で、仏典の研究にに深く心を傾け昼夜を問わず没頭していきました。わずか4年で主なる仏典をすべて書写し、自らのものとしていきました。そして一つの答えにたどり着きます。それは、当時インドで最先端の仏教として続けられ、深められていた「唯識論(心の仏教)」でした。
その時、常に懐に携え、旅中で彼の心の支えとなっていた経典「般若心経」の一節が浮かび上がっていました。 「色即是空」「空即是色」 ……現実は全て「空」…… ……目に見えるもの全てが自分の心を映しだしたもの…… 現世の苦しみと向き合う。そのためには、心の中の汚れ、執着・煩悩・恐怖などを取り除き、全ての塵を払ったくもりなき鏡のようにすることにこそあると確信したのでした。
仏教の神髄に触れた玄奘。彼が帰国を決意するのでした。



ナーランダ(Nalanda)
ビハール州中部(ブッダガヤ北東)に位置する。ここには紀元前5世紀頃に創設された最大の仏教大学があった。学生は1万人以上在籍し、教師は1000人を数えた。ここには9階建ての校舎の他、六つの寺院・七つの僧院があった。図書館には500万冊に及ぶ蔵書を有した。これは古代では世界最大の教育施設だったといえる。大学は、12世紀イスラム勢力のインド制服により完全に破壊され、それと共にインドでの仏教衰退が始まった。

唯識論(ゆいしきろん)
「色即是空」などに代表される大乗仏教の空思想を基礎においている。個人個人にとってあらゆる存在が、「唯」八種類の「識」によって成り立っているとする。ここでの八種類の識とは、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)と意識、及び二層の無意識をさす。二層の無意識とは、意識の下に位置する「未那識(まなしき)」と呼ばれる潜在意識、その下に「阿頼耶識(あらやしき)」という根本の識の二つをさす。これらの八種の識は総体として、人の広範な認識作用・表象作用・思考を内含し、それらと相互に影響を与えて無意識の領域をも内含する。

(掲載写真 ナーランダ大学遺構 撮影2007.1下旬)





 
ページトップへ
 
 
<前頁        次頁>