筆録
 
2007年
 
5月2日 環境温暖化
地球温暖化の進行が、生態系や食糧生産、人の健康などに及ぼす影響を検討していた国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第2作業部会の第4次報告書がまとまりました。 その内容は、 「地球の全大陸とほとんどの海洋の自然環境は、今まさに温暖化の影響を受けている。」と強く警鐘を鳴らすものでした。「二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を減らし、温暖化の傾向にブレーキをかけなければならない。」「それが全人類にとっての急務である。」と報告書は告げています。
すでに地球の各地で、変化が出始めています。山岳氷河の融解、永久凍土地帯の地盤軟化もその一例としてあげられます。また、植物の発芽や鳥の渡りの早期化や、動植物の高緯度地方への移動も確認されています。さらに、湖沼や河川の水温上昇、海面上昇による海岸浸食も起きています。
生態系は復元力を備えていますが、気候変化の影響はそれを超えつつあるといわれています。これ以上の気温の上昇を抑えないと、熱帯から亜熱帯に広がるサンゴ礁は死滅に向かってしまいます。炭素の吸収装置として機能している陸上の生態系が排出装置に逆転し、生物の大規模な絶滅が地球規模で進行し、今の自然は失われます。降水量も偏在し、人類は洪水と干魃(かんばつ)に苦しめられることになります。これは、まさに21世紀の“環境地獄絵”そのものといえるでしょう。
地球の発熱を抑えるための取り組みが、京都議定書の履行という形で来年から始まります。議定書は08〜12年の5年間で、日本・カナダ6%、米国7%、欧州連合(EU)8%の二酸化炭素排出量削減を義務付けました。日本は6%削減に向け不断の努力をし、その準備を行っています。カナダのハーパー保守党政権は4月29日までに、「京都議定書が同国に課した、温室効果ガス排出削減目標を、約束期間の2012年までに達成するのは不可能。」と公式に表明し、地球温暖化防止のための新対策を発表しました。 新対策によると、カナダは少なくとも8年、達成が遅れる計算になります。カナダも、欧州連合(EU)諸国なども、懸命に削減を義務を達成しようと努力しています。
ところが、京都議定書で定めた削減計画からは、世界1位の排出国である米国が離脱しています。映画「不都合な真実」の中で、アメリカの元副大統領アル・ゴア氏は「温暖化の深刻さを示す科学的根拠は十分存在するが、産業界や政治家がそれに目をつぶり、データを改竄(かいざん)するなど問題の先送りをしている。」ことこそが根本的な問題だと指摘しています。第2位の排出国の中国は削減義務を負っていません。地球温暖化防止の効果を上げるためには米中の協調が不可欠であることはいうまでもありません。もちろん、復帰と参加を呼びかけるべきでしょう。
今回のIPCCの報告書は、世界の科学者が集まって作成した「地球診断書」に相当します。2〜3度以上の上昇で地球は重症に陥ることが示されています。ポスト京都議定書といわれる、2013年以降の取り組みを今すぐ考えることが必要です。国際社会は、温暖化防止を軸に動き出すことを、しっかり理解しておきたいと思います。二酸化炭素の削減は待ったなしの状況なのです。

京都宇治 興聖寺
 
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