5月26日(土)、産経新聞「主張」に、「安倍温暖化対策 実効性ある計画へ総力を」と題する、コラムが掲載されましたのでここにその全文を抜粋します。環境問題について、理解が深まる一助となれば幸いです。
安倍晋三首相が、世界挙げて地球温暖化対策に取り組む新たな構想「美しい星へのいざない」(英語名はクールアース50)を発表した。 前途多難で課題も多いが、構想の持つ意味は大きい。実効性ある計画にするためにも、国の総力を挙げた取り組みが必要だ。 安倍構想の評価すべき点は、現在の温室効果ガス排出量削減のための国際的枠組みである京都議定書の欠陥と限界を乗り越えようとした点だ。 京都議定書は、排出量1位の米国が離脱し、2位の中国、5位のインドなどが「途上国」として削減義務を負っていないなどの欠陥があった。
このため安倍構想は、(1)すべての主要排出国の参加(2)途上国も含め、すべての国が参加できる柔軟性と多様性(3)環境保全と経済発展の両立-を3原則とした。京都議定書の欠陥、限界を補うための重要な原則である。 構想はまた、温室効果ガスの排出量を2050年までに現状から半減させるという長期の数値目標を掲げた。 短期、中期の数値目標では、米国をはじめ反対が多く、合意が困難だ。すべての主要国の参加が得られ、かつ実効性ある構想として、長期の目標を設定したことは賢明といえよう。
地球温暖化対策で最大の障害の一つは南北対立だが、安倍構想は、途上国支援のための新たな資金メカニズムの構築を盛り込んだ。欧州の構想などとは違う細やかさが見える。 安倍首相は、1月の施政方針演説で「21世紀環境立国戦略」を策定する方針を示し、地球温暖化対策に取り組んできた。今回の構想は、同戦略の中核をなすものだ。
4月の温家宝中国首相の来日、ブッシュ米大統領との日米首脳会談の際、それぞれ、実効性ある地球温暖化対策で協力しあうという合意を取り付けるなど、外交的布石も打ってきた。 首相は、この構想を来年7月の洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の目玉にしたい考えだが、来年は2013年以降のポスト京都議定書の枠組み作りの山場となる重要な年だ。
今後の課題は、日本の削減義務を果たすこと、特定の国が不利にならぬよう公平の原則を貫くこと、構想の合意を目指すことなどだ。日本の政治、外交の総合力が問われることになる。
