
古代インドの人々は、我々日本人よりはるかに、深刻な状況におかれていました。毒蛇に襲われる確率はかなり高いのです。一瞬にして人やその他の動物を死に至らしめる恐るべき力を持つものとして恐れられ、故に神格化して祀られることとなりました。キリスト教のエデンの園の神話でも蛇は重要な役割を担い、我が国でも八岐大蛇(やまたのおろち)の神話があるのも同様の理由と思われます。仏教において、蛇は龍と同様に扱われており、四天王の配下で八部衆の一人でもあります。法華経序品(ほっけきょうじょぼん)には八大龍王が、それぞれ数千の部下達とやって来たことが著されています。さて、民間信仰では龍は水神とされたので、農耕民族である日本人にとって、豊作をもたらす存在として強く意識されてきました。なぜなら、農業に水は必要不可欠なものであるからです。

カルラは、一日に一頭の龍王と五百の小龍を食べるとされています。恐ろしい存在である龍(蛇)をとてつもない量を食べるというところに、この鳥に与えられた超越性が感じられます。さらに日本では、カルラは烏天狗のモチーフとなりました。龍を食べるということではもう一つ孔雀が上げられます。孔雀も仏殿や法具の装飾にも多く取り入れられています。
写真上:ナーガに守られたお釈迦様(ラオス公園)
写真下:カルラの象