
昔は東京湾でも酒顔雁(さかつらがん)という雁が飛来したそうですが、近年全く姿を見ることができません。昭和46年に猟鳥の指定を取消し、国の天然記念物に指定して保護に努めていますが、渡来地として重要だった千葉県の手賀沼、印旛沼や岐阜の下池など多くの沼が開発されたのが減少の原因であるだけに楽観はできません。
秋の空を、一羽を先頭に隊列を組んで渡る様子は極めて印象的なため、雁の棹、雁陣などと表されます。
かつて欧米では、雁の編隊を元にした飛行戦隊が考案されました。けれども、けがをした雁は仲間と共に北へ帰ることができません。こうした雁は「春の雁」と呼ばれ、哀れを誘います。日本では古くから白鳥と共に霊鳥とされ、魂を運ぶ鳥とされています。
返りては また来る雁よ言とはむ
己が常世もかくや住み憂き (藤原俊成)