筆録
 
2007年
 
11月28日
特集:STOP地球温暖化(その1) 省エネ生活、楽しんで
毎日新聞 05/29


07.5.29付の、毎日新聞東京朝刊に「楽しみながらの省エネ生活」の、具体的な実践の記事が、掲載されていましたので、一部を抜粋し皆様にご紹介を致します。

<水と緑の地球環境>
地球温暖化防止の京都議定書で、日本は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を、1990年に比べて6%減少することを義務づけられた。しかし実際には、05年の排出量が同比8%増となり、目標の達成はかなり困難な情勢だ。産業界はもちろん、国民一人ひとりのエネルギー節約も求められる。自然を身近に感じながら、省エネ生活を楽しむことはできるのか。「省エネ名人」のお宅やエコハウスの現場を訪ねた。【足立旬子】

◇ペットボトル100個の手作り太陽熱温水器

地球温暖化防止には各家庭での取り組みが欠かせない。東京都稲城市に「省エネ名人」がいると聞き、田中由夫さん(63)宅を訪ねた。2階に案内され驚いた。ベランダに黒く塗られたペットボトルがずらりと並んでいる。「ペットボトルに水を入れ太陽熱で沸かし、風呂の湯として使っているんです」と田中さん。
装置は11年前、「大半がごみとして捨てられているペットボトルにも、使い道があるのでは」と田中さんが製作し、取り付けた。黒く塗ったペットボトル(容量2リットル)100本を50本ずつ2列に並べ、管で連結。管からホースを延ばし、水道の蛇口につないだ。水道水は水圧で上昇し、ペットボトルに水が満たされる。
全体をビニールで覆って熱を逃がさないようにし、水温は夏の晴れた日だと50度、曇りの日でも40度以上に達するという。前日の夜にペットボトルに水をため、翌日の午後4時ごろホースの栓を開けると、温められた水が落ちてくる。
この間取り替えたのは100本中5本だけ。日差しの強い3月ごろから12月まで使える。装置の製作費は、ヒノキを使った設置台を含め計5万円かかったが、以前より、4人家族のガス代が月2000〜3000円節約できるようになったという。
【参考:ペットボトル太陽熱温水器の作り方 (サイエンス・シリーズ) 高野 達男 (著)】

◇きっかけは「水道代を減らしたい」

田中さん宅には随所に省エネの工夫がみられる。外を見ると、ドラム缶(180リットル)二つに雨水をためていた。
雨水利用は田中さんが95年に初めて取り組んだ省エネ対策だ。当時、田中さんは母親も入れて5人暮らしだった。洋ランの鉢植えなど花を大切に育てていた母親は庭の散水に水道水を使っていた。上下水道料金は2カ月で3万5000円を超えていた。水道代を減らしたいと思っていた田中さんは、市環境課に雨水利用ができないかと相談し、雨水をためる方法を教えてもらった。
雨水利用を始めると、上下水道料金は2万5000円に下がった。「たまっていた雨水が減るといいタイミングで雨が降り、この12年間にドラム缶が空になったことはない」と田中さんは言う。
豊富で、しかも無料の雨水を使って、庭でキュウリやナス、ダイコンなど10種類の野菜や果物を育てている。雨水は収穫の際に泥を落とすのにも使う。車も洗う。最近は上下水道料金は2万円を切った。
◇庭にソーラークッカー
庭には、パラボラアンテナのような丸い反射板が設置されていた。中心に黒いやかんが置いてある。太陽光を利用する調理器具ソーラークッカー(220ワット)だ。「快晴だと、1リットルの水が30分で沸くんですよ」と妻、好江さん(60)。沸かしたお湯は魔法びんに入れて保温し、料理やお茶などに使う。
直径80センチのアルミ材製のソーラークッカーは、飯ごうを載せて米を炊き、フライパンや鍋で、肉を焼くこともできる。夏場はガスをほとんど使わなくなった。好江さんは「主婦からすれば、家計が助かるのが一番。自然の恵みを利用して、ケチケチしなくても豊かな生活を楽しんでいます」と笑顔を見せた。

◇四季の変化に敏感に

3年前に電線製造会社を退職した田中さんは日曜大工が趣味で、ガレージにはさまざまな工具が並ぶ。ペットボトル温水器は11年がたち、汚れが目立つようになったため、現在、2代目の製作に取り組んでいる。
家で飲んだウーロン茶の空き容器をためて、スプレーで黒く塗るなど、半年がかりで製作。水漏れしにくい接着テープなどを使った。あとは取り替えるだけだ。費用は約1万5000円だった。
田中さんは「太陽光や雨水を使うようになって、四季の変化に敏感になった。好きな日曜大工をしながら、雨水で野菜を育てて収穫、みそ汁に入れて食べる。そして、それらの取り組みが二酸化炭素削減につながっている。おかげで、退職後の生活がとても充実しています」と穏やかに語った。

◇基礎部分に温水を循環させ蓄熱、省エネ住宅をスタンダードに

東京都足立区の会社員、松本直樹さん(36)宅は、コンクリート基礎を温水で温めることで、1棟をまるごと温める省エネルギー住宅だ。
冬場に午後11時から翌日の午前7時まで8時間、基礎を暖めるだけで、木造2階建て住宅(延べ床面積約100平方メートル)の日中の室内温度が20度前後で維持できる。
基礎部分に45度の温水を循環させて蓄熱し、その熱が家全体に放射される。温風によるエアコンと違って、室内の上下の温度差がなく、廊下、トイレ、居間などがほとんど同じ温度に保たれる。床や天井には無垢(むく)のスギをふんだんに取り入れているため、素足で歩くと心地良い。
温水は空気の熱を利用するヒートポンプで効率良く温める。壁は蓄熱性の高い外張断熱(断熱材で外側から覆う)とし、二重構造の屋根には空気の入る穴と、出る穴があり、夏は温まった熱を排熱し、天井面への熱の流入を防ぐ。
オール電化で、4人家族の電力使用量(今年1月分)は前年同月の1576キロワット時から16%減った。主に深夜電力を使うため、料金も2万3400円から約7000円下がった。松本さんが以前に住んでいた同じオール電化マンションは、冬はエアコンと電気カーペットを使っていた。
建築費は3800万円で、土地代も合わせると約6000万円になる。松本さんは「太陽光発電まで手が届かなかったが、省エネで心地良い、ついのすみ家ができた。メンテナンスをしながら50年暮らすつもり。一般の住宅を1500万円かけて造って、2、3度建て替えることを考えれば、そう変わらない」と満足そうだ。
設計者の善養寺幸子さん(41)は、これまで約20棟もの省エネ住宅を手がけてきた。「建物の断熱性をしっかり造ったうえで、機械的に熱を加える時間を制限したり、設定温度を低く保つことで、省エネルギーで快適な住宅ができる。これからは、個人住宅を造るにも、エコハウスは特別なものではなく、スタンダードでなければ」と話す。

 
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